千 宗屋 Sooku Sen
隨縁斎好 茶机 銘天遊卓
現代の生活空間に溶け込む茶机
明治の初め、椅子式の茶のしつらえ「立礼」が考案されて凡そ百年がたちます。その間の我々の生活様式、住空間の変化には目覚しいものがあります。当初正座が難しいと考えられた海外の賓客のため創られたそれは、むしろ今の日本人にとってもなくてはならないものになりつつあります。
現代に生きる茶人として、日々の暮らしの中に必然性を持っておさまる立礼卓とはどのようなものであるべきなのかを、久しく考え続けてきました。今回我が国有数の木匠集団、桜製作所との出合いを機縁に、こうして自分なりの解答を形にすることができたのは、大きな喜びです。 設計に際しては、「卓」でありながら座敷と同様の空気を作り出せるよう、床面からの高さを工夫しています。また客用の机とのさまざまな組み合わせによって、空間の広さ、参集する人数に対応することができ、主客の一体感を損なうことがありません。
従来の立礼のあり方を大きく越え、生活の中に息づく新しい茶のかたちの提案としてこのしつらえを「茶机」(ちゃき)と名づけ、流派を超え広く茶の湯を愛する方々に自由に楽しんでいただきたいとの願いを込め、その銘を「天遊卓」(てんゆうじょく)と致しました。この卓が、今の生活に茶の湯が再び根付くきっかけとなることを願ってやみません。
千宗屋